HLDC院長手塚充樹のブログ

健康寿命延伸型歯科医院実現へ向けて

歯周病原性菌P.g菌がアルツハイマー型認知症の真犯人?進む創薬開発。P.g菌の特徴と検査方法と排除する方法。

アルツハイマー認知症の治療薬として歯周病原性菌の毒素に働きかける薬が海外で臨床試験

 

Cortexymeという創薬開発の会社が、2019年にScience advances という科学論文雑誌に投稿した内容が日本の歯科業界でもすごく話題になりました。

 

※追記。偶然にも、私がブログをupした翌日に朝日新聞からネットニュースでも、九州大学の研究チームがアルツハイマー認知症に対して、歯周病によって原因物質(アミロイドβ)が蓄積するメカニズムを解明したとのニュースがでました。本当に、九州大学大阪大学など歯周病と全身の関わりに関する研究がさかんで尊敬と感謝しかありません。

 

 

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Sience advancesに投稿された論文のタイトル

www.asahi.com

 

 

 

 

アルツハイマー認知症の真犯人が歯周病原性菌!?

 

↓英語ですが、歯周病とP.g菌、アルツハイマー認知症について説明しています。

 


Alzheimer's Disease - One Step Closer to Finding a Cure

 

アルツハイマー認知症は、アミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積することによって引き起こされるという仮説が有力といわれています。

 

アミロイドβというタンパク質が脳内に作られる原因としては、炎症や水銀などの重金属、睡眠不足、脳内への栄養不足などなどが言われています。

 

アルツハイマー病 真実と終焉」という本も読みましたが、今まで、認知症の治療薬はアミロイドβを分解するための薬が誕生したり数々のチャレンジがなされてきたのですが、ことごとく失敗してきたといわれています。

 

 

 

 

リコード法という認知症の治療法があり、認知症にとって悪さする毒素を取り除き、脳に必要な栄養分子を投与するという方法も実績が上がってきていて注目されています。

 

 

予防や食事の改善、習慣の改善などのアプローチに立ち返り、重要性が発信されています。テレビでもよく紹介されていますよね。

 

 

今回のお話は、歯周病原性菌という位置付けで歯科界では歯周病の悪玉菌の代表格として知られているPorphyromonas gingivalis(通称P.g菌 ぴーじーきん)が、アルツハイマー認知症の真犯人である可能性を示すものです。

 

このあとご説明しますが、P.g菌が出すある毒素が原因で脳の中にアルツハイマー認知症の病態を作ってしまうため、その毒素をブロックする薬が開発されており、臨床試験まで進展しているということです。

 

まだ、創薬開発がどこまで進むかどうかはわかりませんし、本当に効くのかわかりませんが、アルツハイマー認知症の治療のために、歯周病の菌の活動を抑えるための薬が処方される時代がくるかもしれないだなんて信じられますか?

 

私自身が歯科医師なので、理解が深いだけにより驚きも深いのかもしれません。

 

このP.g菌という菌は、大きく分けて3つの特徴を持ちます。

 

P.g菌の3つの特徴

1.歯ぐきや血管の内部に侵入して定着できる

 線毛という手足のようなものを持つため、正常な歯ぐきの内部に侵入することができてしまいます。主に、鉄分を餌として生息していますので、歯周病を治療した後も、歯ぐきから血が出やすい状況がまた引き起こされれば、人からでた血液の中の鉄分を餌にして元気になります歯周病治療のゴールは歯ぐきからの出血がなくなることですが、こういった観点からも出血がないようにしておくことが大事といえます。

 また、歯ぐきの中に侵入する程度であればまだ良い?ですが、お口の中の菌は、歯ぐきから出血を起こすと血管が破れて体内に侵入することができるため、ある魚を使った研究では、血管の中に侵入したP.g菌が心臓の周囲の血管にこびりついて離れなくなっている様子が確認されています

 

2.ジンジパインというタンパク分解酵素(毒素)をもつ

 P.g菌という菌はジンジパインというタンパク分解酵素をもち、これが今回のお話の主役です。わかりやすくいうと、P.g菌は歯ぐきの出血などをきっかけに体内に侵入した後、脳のそばまで移動し、ジンジパインを使って血液脳関門(脳と体を隔てるフィルター)を破壊し、脳の中まで侵入し、脳の中でもジンジパインを放出することで脳の神経細胞にダメージを与え、結果的に脳内では炎症やアミロイドβの産生が促され、アルツハイマー認知症の病態を進行させる。ということです。

 狭いところに入り込み、侵入が不可能と思われた脳内へ侵入し人の脳神経細胞にダメージを与えるという任務を遂行する、トム・クルーズさん演ずるミッションインポッシブルのイーサンハントばりのしぶとさと任務遂行力を持つ菌です(無論、イーサンハントは正義の味方ですが)。

 P.g菌にとってはそんなに脳内の環境が生息しやすいんでしょうか。まあ、確かに、脳の中は血流も豊富ですし、人は脳の中をクリーニングすることはできませんから敵も来ません、菌にとっては安全に守られて食材が豊富な天国なのかもしれません。

 逆に言うと、口の中にいてくれているうちは歯周病治療やクリーニング、タンパク分解酵素型除菌水、乳酸菌生成エキスなどでP.g菌にアプローチすることはできます

 あなたのP.g菌を体内に侵入させる前に、口の中にいるうちになんとかすることが、私歯科医師の使命のひとつかなとも感じます。

 

3.口腔内にP.g菌を持つ人と持たない人がいる

 この恐ろしく、なるべくいてほしくないP.g菌ですが、不思議なことにお口の中にいる人といない人がいます。

 実は、思春期のカップル同士のキスもP.g菌を伝播させる一つの方法であるといわれています。思春期のカップルのキスは、その他ウィルスなど様々なものを交換します。それぞれの人の菌やウィルスをみて人を好きになるか決めることはないと思いますが、事実として菌叢やウィルスには個人差があります。子作りもそうですが、いろんな意味で良いパートナーと巡り合えると良いですね。もし、今の時点で悪玉菌が多い方でも、歯周病の治療などを通じて菌のバランスを改善することは可能です。

 歯科医療に従事していると、健康な方、歯周病が先行型の方と、むし歯が先行型の方、かみ合わせで歯を壊してしまう方などなど、人によって特徴があることがわかります。

 お口の中は、口腔内細菌叢(口腔内フローラ、マイクロバイオーム)といって、大きく分けて善玉菌・日和見菌(ひよりみきん)・悪玉菌という三つのチームがあります。

 この3つバランスが保たれていることが大切です。とにかく菌がいなければよいのではないかということで、口の中を消毒したり、菌を死滅させてしまうのがよいのではとお考えになるかもしれません。現実的には菌も大事で、必要な存在ですので、善玉菌(正義)を味方につけて数を増やし、日和見菌(一般大衆)を正義側につけることが大事です。逆に、悪玉菌(悪者)が増えると日和見菌(一般大衆)は悪い側についてしまうことが知られています。

 事実、お口の中の善玉菌を増やす、乳酸菌生成エキスを口腔内に服用したところ、バランスが整うことでP.g菌が排除されたというデータも存在します。乳酸菌生成エキスは商品名はアルベックスという名前で製品化されています。

 

healthylife-dental.jp

 

 

 

口の中のP.g菌を調べる方法

 P.g菌のPCR検査

 


口腔内細菌検出装置 orcoa(オルコア)

 

オルコアという会社のオルコアという装置があります。もともと、A4M Japanという学会でブース出展されていたところに私が興味を持ち、担当の方に話しかけたのがきっかけでした。

検査手法も簡単で、歯間ブラシで歯垢を採取させてもらうだけです。

検査結果がでるまでは45分程度はお時間がかかりますが、P.g菌のDNAの量を測定するPCR検査を行うにしてはすごく簡便で短時間といえると思います。

 

この検査の良いところは、歯間ブラシをもちいて歯垢を採取するため気になるところをピンポイントで調べられることです。

 

ヘルシーライフデンタルクリニックでは、1か所3000円(税抜)で検査を行っています。今まで、3菌種~5菌種を調べようとすると15000円~20000円程度は頂戴する必要があったためコストも抑えられているといえるのではないでしょうか。

 

【公式】料金表|ヘルシーライフデンタルクリニック

 

 


www.youtube.com

 

銀歯のそばが歯周病の治りが悪い場合、親知らずの抜歯を検討している場合、歯周外科を行ってより専門的な歯周病治療を行うべきか迷っている場合など、積極的に治療をしていくべきかどうかを判断する材料としても使えます。

 

 

 

まとめ

 

今回はアルツハイマー認知症の治療薬として、P.g菌が出すタンパク分解酵素ジンジパインという物質を阻害する薬が開発されているというお話を軸に、P.g菌の特徴や調べる検査P.g菌をお口の中から排除する方法について記載しました。

 

創薬開発が進み、ジンジパイン阻害薬が定着したとしても、P.g菌のそもそもの発信源である口の中の治療を並行して行う必要はでてくるでしょう。

 

どんな病気もそうですが、薬というエンドポイントに頼るよりももっと上流から防げる方法を行っていくことが大事です。

 

将来の副作用や体への負担を軽減するためにもお口の中の健口を目指しましょう。

 

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「ヒトは口から美しくなる、長く幸福な人生を支援する」

ヘルシーライフデンタルクリニック 院長 手塚 充樹

 

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