先日は、東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)の歯学部5年生の学生さんが、ヘルシーライフデンタルクリニックに医院見学に訪れました。
歯学部5年6年生あたりは自分の進路について悩む時期
ちょうど歯学部5年生というと臨床実習といって、歯科臨床で日ごろどのようなことを行っているのかどうかを間近で見ることができる時期となります。
歯科医療界は専門性がかなり細分化されていて、医師の知人にも驚かれることがあります。開業歯科医院と大学病院でも診療の仕方や専門性の特化度など異なる点が多いです。
そのため、「口腔外科に進んで大学病院で働くような歯科医師になろうかな」とか、「大学病院にいるうちに矯正歯科の技術と知識を習得しようかな」とか、「早く開業医院で働いて稼げるようになろう」とか、若い歯科医師の時期ならではのできることをすべきなのか考えたりするものです。
今回見学に来てくれたお二人は、まさにそのような悩みを抱えているので複数の医院を見学しているとのことでした。
そのうちの一人は、分子栄養学・オーソモレキュラー医学の観点での診療を受けて体調が改善した経験を持つそうで、自身の歯科医療にもその知識を役立てられないかどうか模索しているとのことでした。
自分は、学生の時は口腔外科か矯正科かどちらに進むかどうかで悩んでいました。学生時代からかみ合わせに強い関心があり、大学の図書館で咬合理論に関わる本を読み漁っていた時期もありました。
かみ合わせに特化するために矯正を学ぶのか、大学病院のような入院施設がないとわからない全身管理のことを学ぶのかけっこう悩みました。
また、研究という自分の中では道だった領域にもあこがれと関心がありました。
結果的には、口腔外科・口腔内科分野の大学院に進み、脊髄損傷の際の中枢神経の再生医療の研究をしました。特殊な条件下で細胞に起きる分化転換というエピジェネティックな現象を利用した再生医療の研究でした。やりがいがあり、ある程度成果は出たものの、NatureやSienceといった有名論文雑誌にパブリッシュされるような論文として1本をしたてあげるにはあまりにも自分には先が途方に暮れるものでした。
大学院生活を卒業するため、学位論文では閉経後骨粗しょう症とレプチンという分子の関わりを研究して学位論文とさせてもらいました。
大学院にて博士号を取得した後は、一般歯科の道に進み、様々な一般歯科診療の際に突き当たる課題と向き合いながらいろいろな講習会を受講しました。
受講した講習会の中には、歯科診療のテクニックに関わるものもあれば、オーソモレキュラー医学・分子栄養学に関わるもの、点滴療法に関するものなどがありました。
大学院時代の研究で頭が痛くなるほど、細胞や分子については向き合ってきたので、内分泌代謝の分野であるオーソモレキュラー医学・分子栄養学の話が自分の頭に入ってきやすかったことも今となってはつながったんだなと実感しています。
様々な角度から歯科医療をみた一つの結論「消化吸収能力」について
ヘルシーライフデンタルクリニックは港区新橋の新橋駅や内幸町駅前にあります。電車が乗り入れている種類が多く、JRだと東海道線や上野東京ライン、横須賀線・総武線快速線がある関係で横浜エリアや千葉県のエリアからの患者さんもいらっしゃいます。
比較的遠方の方は、当然ながら、自費診療の歯の根管治療や、非抜歯矯正、顎関節症治療、親知らず抜歯、歯のすきっ歯を治すためのダイレクトボンディングという治療などの特化した治療を求めていらっしゃる方が多いです。その後、治療したところを良好に保つために定期健診に通われている方も多くいらっしゃいます。
一方で近隣に住まわれていたり、勤務をされている方は保険診療を主体とした一般的な歯科診療を行っているケースが多いです。
当院のコンセプトは、「口から未来を明るく、美しく」といった「健康寿命の延伸」を理念としていますので、治療を通じて、消化吸収能力の低下の傾向を探ったり、栄養状態の診査や改善などもできる体制を整えています。
今回見学をしに来てくれた学生さんが求めていた答えの一つがこの「消化吸収能力」という言葉の中にあります。
歯科医療と健康寿命延伸と消化吸収能力の関係について
歯科という分野は、お口の中の機能を診ることができる唯一の専門科です。患者さんの健康観を支えるためには、「おいしく飲食ができる」「病気がない」などの状態を一つのゴールとすることが望ましく、このゴールを達成するためには消化吸収能力を高めることが欠かせないと考えています。
歯の治療でいえば、咀嚼能力を高めるための矯正治療、顎関節症治療、被せ物や詰め物や、インプラント・義歯・ブリッジなどの治療がそれにあたります。
また、分子栄養学・機能性医学といった観点から考えるのであれば胃腸の消化吸収能力を高めるための、胃酸の排出を促す食事指導や、消化酵素の処方、ピロリ菌の除菌、腸内カンジダの除菌治療などがそれにあたります。
分子栄養学では、血液検査データから患者さんの栄養素の不足状態を診ることができますが、不足している栄養素をすべてサプリメントにして提供すれば全員が健康増進につながるわけでもないことがわかっています。
特に消化吸収能力の低下は、サプリメントの消化吸収能力の低下とも関連すると考えられるため、「サプリメントを飲んでいるのに効かない」といった状態に陥る可能性があります。
消化吸収能力の診査を行うためには、口腔内のかみ合わせの精密な診査と、胃酸の排泄能力などのいわゆる「上部消化管」いわれる領域の状態の診査が必要となります。
口腔内のかみ合わせの診査には、顎にとって楽な位置と歯並びが一番かみ合う位置のずれをみたり、顎関節の骨の状態や周囲の筋肉の状態を診査します。
歯並びが体の動きにとって適切な位置関係にない場合には、顎が疲れやすくなったりするので、無意識に咀嚼回数が少なくても済むような食材を選びがちになることがあります。
胃酸の排泄機能を見るためには、血液検査が有効なので、血液検査を用いて消化する能力を推察しています。ペプシノーゲン法という方法を用いると胃酸の排泄能力や胃炎の有無を推定することができますので、病気を疑う場合には消化器内科の先生に内視鏡診査のお願いをするといった医科歯科連携をとることもあります。
実際の臨床では、患者さん個々の要望や背景とすり合わせて方針を決定する
かみ合わせの状態や食生活の内容や咀嚼回数の問診、胃腸の状態の診査などを通じて、現状維持のままできることや、積極的な治療を行うことによって得られるメリットなどを総合して患者さん個々と話し合って方針を決定していきます。
本当に簡単な例でいえば、舌のピリピリ感と全身に元気が出ないなどの不調を訴えていた方が、血液検査による栄養解析の結果から、鉄欠乏性貧血と慢性的な低血糖傾向および低胃酸排出による消化吸収能力の低下傾向であることがわかりました。
咀嚼回数の増加や、食前の酸味(お酢や梅干しの活用)による胃酸排泄促進、補食の活用、食生活の変更、市販のサプリメントの飲用を通じて症状が改善したこともあります。
サプリメントについてはやはり良し悪しはありますので、責任をもっておすすめできるのは当院で販売しているサプリメントとなりますが、サプリメント以外の要因によっても改善が見込めるのは今このブログを読んでいらっしゃる方にもプラスの情報なのではないでしょうか。
「よく噛んで食べてください」という指導はどこの診療科のお医者さんでもできるわけですが、咀嚼がちゃんとできる口腔状態かどうかを診査することができるのは歯科だけですので、口腔機能がみれる歯科という診療科ならではの指導内容ではないかと個人的には思います。
結果的には学生さんの医院見学を通じて自分も頭を整理できるよいきっかけになった
最初は、学生さんの見学の提案を受けた時は、「どんな学生が来るんだろう」「とりあえず歯科医院内をぐるっと歩いて見せればいいんだろうか」と考えていましたが、最初に思っていた以上に自分にとっても有意義な時間が過ごせたので良かったです。
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院長 手塚 充樹 歯科医師 歯学博士(口腔内科学専攻)
口の中のデータを全身の観点で解釈する専門家・探求家。 口腔内科学や歯周医学や分子整合栄養医学などの観点から、再発を抑える精密な歯科治療を推奨している。 診療分野は、口腔外科領域の治療、歯周組織再生療法、歯周外科、インプラント、ダイレクトボンディング、セラミック治療、根管治療など幅広く対応している。