歯科医師の手塚充樹です。
国際歯周内科科学研究会という、学会の総会に参加しに大阪まで行ってきました。
主に、今後の歯科医師という職業が担っていくべきことの内容などについて、意義のあるものを提唱していく学会だと思っています。
「従来の歯科医療のあり方に対する問題提起をする。」
というあたりがとても大事なところです。
3人の先生方に講演をしていただき、開始から合わせて、約7時間ぶっ通しで知識を取り込んできました。
糖尿病専門医でいらっしゃる西田亙先生の発表は特に印象に残っております。
ご本人がもともと、歯周炎を抱えており、体重も重く、健康状態が良くなかったところから、
歯周治療を始めたことで、体質が劇的に改善し、体重も減少したことで、歯周炎の治療の重要性を実感し、医師という立場から歯周治療の必要性や重要性を、ヘタしたら歯科医師以上に拡めて下さっている先生です。
すでに、日本医師会(歯科医師ではなく医師です)では口腔内のケアをすることで入院日数が短くなることなどを主体として、かなり口腔内の清掃、ケアに関しては注目が集まっているそうです。
日本医師会雑誌のメインタイトルに口腔ケアのことが載るほどの注目度です。
そこで、大きな問題となるのは、日本歯科医師会および多くの歯科医がその事実に対する意識がまだ追いついていないことです。
今回参加した「歯周内科」という概念も、歯科医師よりもむしろ医師の方たちにすごく反響があると聞きます。
そんな中で、今回参加した学会に所属している歯科医師先生方は、歯周炎を治すことで患者さんの健康状態を改善しようという意志を持った方が集まっているんだと思っています。
そんなわけで、西田先生のお話には、そういったエッセンスがたっぷりと詰まっておりました。
要するに、僕ら歯科医師の仕事というのは今の現状では考えられないくらいに重要だということなんです。
コンビニより歯科医院の数が多くて過当競争とかいわれて大変だねーって思われたり、
設け主義な歯医者が増えてきてて行くのも怖いとか、
マイナスな面を指摘されることも少なくありません。
現在の歯科医師の従来の感覚と知識だけではそれには及ばず、まだまだ勉強不足なんだと思います(あくまで、日本の全体の歯科医師を対象とした場合のことです。勉強されててすごい歯科医師の方も沢山いらっしゃいますのでご安心を。)。
虫歯や歯周炎があることが発覚したとき、削って銀歯でも入れてはい終わり。
また口の中が悪くなったら来てねーでは、本当の意味で患者は幸せにならないのです。
虫歯や歯周炎が発症しないように、長期に安定させてあげることが重要なのです。
そのためには、毎日摂取する栄養のことや、お口の中や胃腸の中に存在している菌のお勉強が欠かせないのです。
私の父は歯科医師です。
父が一時期よく口癖のように言っていた言葉があります、
「臨床では机上の勉強はあてにならないし、使えないんだ。現場に出て手を動かすことが大事なんだ。」と。
その発言はたしかに、外科的な手技を学んだりテクニックを身につけることに繋がると思います(厳密に言えば、外科の手技などテクニックなどの部分においても、論文データなど理論はかなり大事)。
少なくとも、従来の歯学部生徒に対する教育内容や、歯科医師国家試験に求められる知識のみであればそうなのかもしれません。
僕は、未だにその発想には全く賛成できません。
僕ら、歯科医師はテクニシャンという側面を持っており、腕を磨くことは最低限不可欠であり、手先はある程度器用であったほうが良いと思います。
しかし、僕らも人間ですから、歳をとれば目も見えにくくなり、手先もうまく動かなくなってくる。とっさの判断も鈍くなり運動能力が落ちてきます。
もっと大事なことは他にあり。
歯科医師は、実際に手を動かして処置や手術をするような「外科的」「テクニシャン的」な側面と薬の処方などを主体に症状を抑えていく「内科的」な側面と
栄養指導や体質改善を目的とした「neutrition doctor(栄養を用いて疾患を治す医者のこと)」「漢方医」のような側面など色々と持ち合わせている必要があり、
突き詰めていくととてもやりがいがあり、高度な職業だと思います。
僕ら歯科医師はもっと大きな可能性を持った職業だと思っています。
そのためには机上の勉強は欠かせないです。
先程お名前を挙げた西田先生の発表の中にもありましたが、日本糖尿病学会が歯周病の治療は糖尿病の治療に有効であることを提唱する時代がきました。
その事実を患者さんに伝えてわかってもらうのは正直言って一苦労です。
さらっと説明しただけではわかってもらえないこともあります。
西田先生のような医師の方がたくさんいらっしゃれば違うでしょうが、僕ら歯科医師からもどんどんその必要性を説明していく必要があります。
身体に起こる様々な問題(肥満、生活習慣病、心筋梗塞、脳梗塞、認知症などなど。。。)が、日々の食事を原因として起こってきていることがとても多いということがわかってきていますが、実際に医師にかかられる方たちは基本的には「症状が何か出てから」医師にかかる方が大多数を占めていると思います。
歯科医院でも、お仕事が忙しい患者さんが来院されることも多く、本来は治したほうがよいような歯も、痛くなければ放置してでも仕事を優先していらっしゃいます。
それを日々の食事から身体を作り、虫歯や歯周病、更には全身の疾患が発症しないようにする手助けができればどんなにやりがいがあることでしょう。
僕も、もちろん患者さんも、歯を削ったり、身体にメスを入れるのは嫌なものです。
その頻度を減らし、長期に安定を得る食事療法は本当にスーパー有用だと思います。
摂取しないほうがよい栄養素、摂取したほうがよい栄養、現在の日本には摂取しないほうがよい栄養素も溢れていますので、しっかり選んで患者さんと一緒に健康的な生活を過ごせるようになるのが今から楽しみです。