どうも、歯科医師・歯学博士(口腔内科学専攻)の手塚充樹です。
口腔外科領域の病気、舌や唇や頬などの口腔粘膜の病気、味覚障害、舌痛症などの病気も担当します。
味覚障害や口腔粘膜の症状は栄養状態のバランスの乱れからくることもあるので、栄養医学(オーソモレキュラー、分子整合栄養医学)などの領域を勉強し、予防医学・予防歯科にも日々研鑽を積んでおります。
専門的な歯周病治療や、インプラントやセラミック治療、ダイレクトボンディング、マウスピース矯正などをお考えの場合もご相談ください。
急に舌がしみる??
急に舌がヒリヒリしたりしみる感覚に見舞われたことはありますか?
原因には複数考えられるものがあります。
1.鉄分の欠乏
鉄分が不足してしまうと、舌炎(ぜつえん)といって舌に炎症が起きてしまうことがあります。
舌の表面がツルツルになったり、赤くなったりして、ヒリヒリしたり灼熱感がでるのが特徴です。
鉄分が足りなくなることはあるの?
「隠れ鉄欠乏」という言葉を聞いたことはありますか?
鉄分の欠乏は、月経でも起こるといわれておりますので、鉄欠乏は主に女性に起こりやすいです。
鉄欠乏性貧血という状態が、舌の炎症や痛みにつながるといわれています。
鉄欠乏性貧血の診断は血液検査を用いて行います。
しかしながら、この鉄欠乏性貧血。血液検査で診断がつくのは結構重篤な状態です。
「隠れ鉄欠乏」がなぜ重要なのか。
実は、舌のヒリヒリ感や灼熱感については、鉄欠乏の「傾向」があっても、鉄欠乏性貧血と出る症状が一緒であることが言われております。
そのため、「隠れ鉄欠乏」という表現が用いられています。
他に隠れ鉄欠乏で起きる症状には以下のようなものがあります。
□朝起きるのがだるい
□立ちくらみ、めまいがある
□手足が冷えやすい
□元気がでない
□爪の状態が悪い
□よくあざができる
□歯ぐきから出血する
他にも該当する症状は有りますが大体このような感じです。
普段から、レバーが苦手だったり、その他の鉄分を含む食材を食べない女性は、月経によって月に1回多くの鉄分を失ってしまうので、知らぬ間に鉄分が足りなくなることが多いといわれています。
当然、鉄分だけが足りなくて上記の症状が出ている方もいらっしゃればその他のビタミンB群やビタミンC、亜鉛などの不足によって症状が出る方もいらっしゃいますので、血液検査や症状などから拝見させていだくことが必要です。
2.カンジダ(真菌、カビの菌)が増えている
カンジダというカビの菌がお口の中や腸などに生息していることをご存知ですか?
あまり量が多いと、鼻の穴の中のCT写真に写ってきたり、口腔粘膜には白い斑点のようにみえることもあります。
舌の乳頭といって舌の表面は絨毯のようになっています。
カンジダというカビの菌が粘膜に悪い作用を及ぼすと、舌の表面が表面がぼこぼこしたり、赤くなったり様相が変化してきます。
カンジダ症は必ずしもカビの菌の多さと症状が比例するわけではないことが知られているのですが、舌の表面や頬の粘膜のカビの菌を検査することはできるので、お気軽にお問い合わせください。
保険適応ですし、お口の粘膜をこすらせてもらうだけです。
保険診療では、カビの菌に対するお薬(抗真菌薬)を処方することも可能です。
3.歯が尖っている部分がある
意外かもしれませんが、かみ合わせの関係、歯ぎしりなどの結果として歯が尖っている部分ができてしまうこともあります。
もしくは、部分入れ歯などの金具などが尖っていて舌の粘膜を刺激してしまっている場合もあります。
尖っている部分を研磨用の器具で丸めてあげることで痛みも落ち着いた方を複数例経験しています。
ささいな鋭縁が原因になっていることが多いので触診で確認しています。
4.舌痛症
舌痛症とは
舌痛症(ぜっつうしょう)という病気があります。症という漢字がついている疾患は、わりと原因などがあいまいです。
結果として舌が痛くなっていることを病名にした感じです。
上記の三つのようなものも総合して診査させていただきます。
それでも当てはまらない場合には、精神的なものという判断になります。
しかしながら、この「精神的なもの」。大学病院で診察をさせていただいていたときは、「精神的なもの」として片づけていたのですが、最近になって、「精神的なもの」として片づけてはならないのではないかと考えるようになりました。
精神的な病気が起こることにも原因が見つかることがあります。
より深く口腔内科的なことに思いを馳せると、精神的なことですら体内の分子の代謝障害であることがわかります。
「精神的なこと」として片づけて良かったのか
今思えば、大学病院の診療をしていた時は、精神的なことからくる症状についてどのように対応すべきか分かっていませんでした。
今となっては、本当に、体の中の分子の代謝障害によっていろいろな症状が精神状態も含めて現れるという可能性について考えることができるようになっているので、あの頃にもどれたら、大学病院にいらっしゃっていた数々の舌痛症の患者さんはどうなっていたんだろうと考えたりすることもあります。
昔から、うつ病はセロトニンという物質の代謝障害であると考えられていますので当然といえば当然なのですが。
抗うつ薬を服用してもらえばそれでよいのかということも大変気になります。
セロトニンは、体内のタンパク質(分解するとアミノ酸)を原料として合成されます。
こちらの図をみていただくと、精神を安定させる物質は、タンパク質を原料として、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB6、ナイアシン、胃酸などの消化吸収された栄養分子によって作られていることが分かります。
舌痛症とともに、胃腸の状態が悪い方は、栄養素による問題も考えられます。
栄養分子の量と質と代謝の改善
栄養分子がそもそも足りていないのであれば欠乏の改善や、うまく分子を変換するための補酵素(ビタミン・ミネラル)が足りていないのであればその代謝の改善でこれらの神経伝達物質が正常に生成されるように仕向けるベクトルもあります。
その一方で、薬物によるコントロールでは、一般的にはセロトニンのレセプター(受容体)に働きかけて量をコントロールするなどのアプローチとなります。
薬物は即効性はあるかもしれませんが、ベースとなる栄養素の代謝障害も整えながら薬物からの脱却や減薬を目指していくことがとても大切でしょう。
ポリファーマシーという社会問題
現在の日本ではポリファーマシーといって、薬物の服用の種類が多すぎることが社会問題ともなっています。
厚生労働省の報告によると6種類以上の薬を服用していると未知な副作用に悩まされる可能性も高くなります。
また、5種類以下であってもその方の体内環境によっては薬物による有害事象が起こる可能性があります。
現在の日本においての社会問題ですので、精神的な問題についても総合的なアプローチ、食事・栄養分子の補填・栄養代謝の改善によるベクトルが求められています。
肝機能が弱ってくると薬物を代謝する能力が落ちることも一つの要因と考えられています。
栄養素でいうと、マリアアザミやウコンエキスなども胆汁の出をよくしたり肝臓の解毒能力を高めるといわれています。
医療機関専用サプリメントでも、上記の図の中に出てくる「ナイアシン」という物質のサプリメントに、マリアアザミやウコンエキスが含まれているものがあり、精神状態の改善や肝機能の改善に期待しています。
かみ合わせを回復することと摂取できる栄養素の違い
また、栄養素の摂取については、やはりかみ合わせや歯の本数、噛む回数などの基本的なことも非常に大事ですし、適切なかみ合わせの回復は、お薬の減薬すら達成できるのではないかと個人的には考えています。
栄養素の代謝を考えて、インプラントや義歯が入った後に食生活を適切に戻していくことが大切です。
せっかく噛める歯が入ったので、肉や魚、ナッツなど噛み応えがあって栄養があるものを食べるようにしましょう。
詳しい栄養素のバランスについては、その後興味がでてきたらより気を付けていくと健康増進につながるでしょう。
舌が痛いという症状からここまで話が膨らみました。
今回もここまでお読みくださり誠にありがとうございます。
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「ヒトは口から美しくなる、長く幸福な人生を支援する」
ヘルシーライフデンタルクリニック
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