HLDC院長手塚充樹のブログ

健康寿命延伸型歯科医院実現へ向けて

ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイルと歯科・栄養素・代謝の関係 ~健康寿命延伸型歯科医院ヘルシーライフデンタルクリニックから予防・かみ合わせ・栄養情報~ その1※続編あり


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ロコモティブシンドロームサルコペニア、フレイルとは?

歯科医師の手塚 充樹です。今回も読んでいただきありがとうございます。

 

ロコモティブシンドローム(locomotive sindrome)とか、サルコペニアという言葉はご存知でしょうか。

 

似たような意味合いを持つものの、意味には若干の違いがあります。

 

ロコモティブシンドロームは、加齢変化や身体の衰えによって一般的に併発してくる、変形性関節症や骨粗鬆症などがきっかけとなり、

「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態 」

引用元 日本整形外科学会

 

サルコペニアとは、「加齢や疾患に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下」のことです。サルコペニアが筋肉に対してフォーカスしている言葉であるため、ロコモティブシンドロームとは指す範囲や意味合いが少し違います。

以下引用文をお読みください。「サルコ」という言葉自体の語源が「筋肉」なんですね。

サルコペニアという用語は、Irwin Rosenbergによって生み出された造語で、ギリシャ語で筋肉を表す「sarx (sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた言葉です。

 EWGSOPサルコペニアの診断基準によると、サルコペニアは、1.低筋肉量を裏付ける証拠に加え、2.低筋力、あるいは3.低身体機能を満たす場合に診断されます。

※EWGSOP:European Working Group on Sarcopenia in Older People

                                    引用元 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sarcopenia/about.html

 

フレイルとは、「虚弱」な状態になっていることを指します。

フレイルは、海外の老年医学の分野で使用されている英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味します。日本老年医学会は高齢者において起こりやすい「Frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、多くの議論の末、「フレイル」と共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱しました1)

 

引用元https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html

 

今回はサルコペニアに焦点を当てて記述します。

 

人生100年以上時代においては、「加齢」という現象の個人差が大きくなる

これからの時代、人生100年時代、場合によっては人生180年生きることができるというように述べる本の著者も出てきているほどです。

「加齢に伴って生じる」という言葉ですが、寿命自体が各人においてかなりバラつきがでそうな昨今において「加齢」という言葉を適切に使うことが簡単ではなくなってきています。

では、どんなことが原因で全身の筋肉量の低下が起こるんでしょうか。

栄養素のバランスや食べる量の減少などいろいろなことが関与していますが、今回はその中でも歯科からの健康寿命延伸の観点から述べたいと思います。

 

 

サルコペニアという状態で筋肉が減った場合に起こる恐ろしい事態とは

筋肉が減ってふらふらすることで、何かの拍子に階段から転げ落ちてしまったり転倒をすることで足や肋骨を骨折してしまったりすることで、寝たきり生活が始まってしまう場合も少なくありません。

いわゆる「健康寿命」を失いかねないのがサルコペニアなのです。

 

 

サルコペニアと歯科の間の5つの関係 ~健康寿命延伸型歯科医院の観点~

このブログを読んでくださっている方の中には、歯科とその身体の虚弱の間にどのような関わりがあるのかよくわからない方もいらっしゃることでしょう。

以下、5つにまとめました。

 

  1. 普段の食生活と筋肉量の維持の関係性とは

  2. 歯科治療と習慣的に食べられる食材の変化「オーラルフレイル」

  3. 歯の痛みや喪失と食習慣の負のループ

  4. 歯を失うだけでも筋肉量が減少する

  5. いざ噛めるようになったときに気を付けるべき食習慣とは

 

今回は目次の中の1と2を取り上げて記述しますね。

 

 

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 1.普段の食生活と筋肉量の維持の関係性とは

歯科口腔領域において、食生活の影響がお口の中にダイレクトに現れやすいということがあり、私の中では特に切っても切れない関係となっています。

 

人のタンパク質は体の中にプールされている 

 肉や魚、大豆などに含まれているタンパク質ですが、これらは分子量が大きい「タンパク質」という状態から、分子量が小さい「アミノ酸」という状態まで分解され、体内にプールされます。

 

 貯蓄されたアミノ酸プールの中から、体の中の状況に合わせて新たなタンパク質を作り出す行為(同化)や、タンパク質を壊す行為(異化)を体が行います。

 三大栄養素である糖質、脂質、タンパク質ですが、これらは人のガソリンのようなものでエネルギー代謝の要なので三大栄養素と呼ばれています。

 

この3種類の栄養素の中から、糖質や脂質を主体としたエネルギー代謝が行われていればタンパク質を作る(同化)がスムーズに行われ、傷を治したり、免疫を上げたり、精神を安定させる分子を作り出したりする方向性の動きを取りやすくなると考えられています。

 

タンパク質の摂取量が少なすぎたり、脂質代謝などエネルギー代謝が落ちると筋肉を分解してアミノ酸を体に供給しようとする。

 

さきほどご説明したように、アミノ酸のプールは必要に応じて使われていくのですが、アミノ酸プール自体が少なくなってくると、人は自分の体の中のタンパク質を壊してアミノ酸を補填しようとします。

その体の中のタンパク質として壊されるものが筋肉です。

 

筋肉を分解してアミノ酸を供給する行為が繰り返されると筋肉が痩せる

Ⅱ型糖尿病が進行してしまった方などにみられる、痩せるという状態。

もともと、糖尿病予備軍といわれる方々は、基本的に肥満であることが多いですよね。だから、メタボリックシンドロームの検診で腹囲(ウェスト)を測ったりするわけですよね。

しかしながら、糖尿病の方の病態が進行してくると痩せてしまうことがあるんです。

痩せ始めたということは、体がエネルギー源として糖質や脂質をうまく使えなくなり筋肉を壊してなんとかエネルギーにしようとし始めた可能性があります。

 

糖質代謝や脂質代謝が著しく低下すると筋肉を代謝してエネルギー代謝しようとしてしまうため、「重度糖尿病の人が痩せ始めたら危険」といわれています。

 

タンパク質は筋肉量の維持だけではなく、傷の修復や免疫能の維持、精神安定のためにも使われるので大事

 タンパク質は体を維持していくために必要不可欠だということと、体の中の筋肉とも関りがあるということをお伝えいたしました。

 

 

 

2.歯や口の病気と習慣的に食べられる食材の変化「オーラルフレイル」

噛めなくなったり歯が痛いとき、うどんやお粥などを食べるようにしていませんか?


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歯に何かしらの問題があるときに気を付けていただきたいのが、「糖質偏重食」になっていないかということです。

どうしても、ナッツ類や、赤身のお肉などは歯ごたえがあり、噛むために力が必要な場合もあり噛む回数も必要になってきます。

そのため、歯が痛いときに柔らかいものを食べた方が良いだろうということで「うどんにしておこう」というようになりませんか。

 

「うどんとかなら食べられるし生きていくにはなんら問題ないだろう」

 

実は、落とし穴がここにあります。

 

知らず知らずのうちに低タンパク質状態やビタミン不足になることも

あまり噛まずに栄養があるものを摂ろうと考えた時に、うどんや、お粥、他お手軽にコンビニなどでゲット出来る糖類を含んだゼリーや栄養ドリンクを摂取する方もしらっしゃるのではないでしょうか。

 

その場しのぎとして栄養素の供給が間に行ったとしても徐々に身体は糖質偏重食の影響を受け始めるでしょう。

 

 

糖質偏重食による影響を受けやすいのが血糖値の乱高下や口腔内のプラーク沈着

 私が普段臨床の中で、来院される方のお口の中の環境と食生活を照らし合わせてみると、糖質偏重食の方は歯を失っている割合や歯垢プラーク)や歯石の沈着について多い傾向があります(私の肌感です)。

 

プラーク沈着やかみ合わせの変化によって歯周病やむし歯(う蝕)の発症

プラークだけではなく、歯を失うことによってかみ合わせの力のかかり方やプラークの溜まり方が変わることも原因となっているにせよ、新たな歯科疾患が発症してしまうリスクが高まります。

 

 噛み応えのある肉やナッツなど良質なたんぱく質の摂取が難しくなってくる

 

どうしても、現代において、柔らかくて食べやすいものって、お粥やうどん、バナナ、プリン、ゼリーなど糖質を含んでいる物が多いですよね。

それでおなかを満たしてしまうと、ビタミン・ミネラル・タンパク質の摂取量が減りがちになってしまいます。

 

明らかになってきているビタミン類の不足による筋肉量の減少

私が確認できたまででも、ビタミンCやビタミンDの摂取によって筋肉量の維持および運動機能の維持ができたという論文があります。

これによって、肉類魚類やナッツ類を食べられなくなることだけが原因ではなく、ビタミン類についても筋肉にかかわっていることがわかります。

 

引用元:ビタミンC不足は筋萎縮と身体能力の低下をもたらす S.Takisawa T.funakoshi Vitamins(Japan), 93(9), 401-403(2019)

 

 

次回は、3.歯の痛みや喪失と食習慣の負のループの部分から記述したいと思います。

 

読んでいただきありがとうございます(^▽^)/

 

 

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歯科医師 博士(歯学)

手塚 充樹 Mitsuki Tezuka

ヘルシーライフデンタルクリニック院長

healthylife-dental.com

 

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