どうも、歯科医師の手塚 充樹です。
今回のテーマは題して
「予防補綴のススメ。~むし歯治療にセラミックをうまく活用しよう~」です。
なぜ、予防とセラミックが関係あるのか
なぜ、こんな記事をつくるのかというと、セラミックで歯を治すことの利点は見た目の改善だけが目標ではないからです。
なんとなくセラミックと聞くと、「前歯の治療に使うものでしょ」とか、「奥歯はあまり他人から見えないしセラミックは入れなくても良いかな」とか考える方もいらっしゃるかと思います。
しかし、もっと患者さんの「身体」に対して意味のあることなんです。
それは、セラミックは、天然の歯と似ているからです。
以下、その理由を5つにまとめてみました。
セラミックが天然の歯と似ている理由。
1.歯ぐきと仲良し
銀歯の被せ物が入ると、歯ぐきは経年的に下がってくることが多いです。銀歯のそばが真っ黒になっていることもよくあります。
それに対して、セラミックは適切な形で被せ物を作れば、むしろ歯ぐきが増えてくることも知られています。
擬似エナメル質(ヒトの歯の表面にある結晶構造の石のような部分をエナメル質と呼びます)と呼ばれることもあるくらい、歯のモノマネをしてくれるため、歯ぐきがあたかも自分の天然歯と勘違いしているかのごとく、寄り添ってくれます。
2.温度変化から受ける影響が似ている
私たちのお口の中は、体温と違って、実に温度変化が激しい場所です。
体温って、熱が出たりしても大体3℃くらいの違いですよね。
お口の中に入る、食べ物や飲み物の温度って、場合によっては熱いスープなどは80℃くらいだったり、氷水は4℃くらいだったり、かなり温度差がありますよね。
実は、加熱膨張といって、私たちの歯や詰め物は、加熱によって膨らんでいます。
そのため、日々起こる温度変化によって、寸法(サイズ)変化を繰り返し、詰め物が歯からズレてきて、隙間があき、接着剤が唾液で溶かされ、新たなむし歯を作ってしまうこともあります。
そんな日々のサイズのズレを最小限に抑えてくれるのがセラミックです。
セラミックは加熱膨張する度合いが歯に似ているため、日頃の温度変化でズレてくる心配が少ないと考えられています。
3.アレルギーを起こさない
お口の中に起こるアレルギーとして、金属アレルギーというものがあります。
日本の歯科医療で使われている銀歯の素材は「金銀パラジウム合金」というものがほとんどで、色んな金属が合わさってできています。
その中でも、パラジウムを含んだ銀歯については、最近ドイツやヨーロッパ諸国では、注意喚起が出されています。
子供やこれから妊娠する若い女性などには入れないようにしようというもので、アレルギーのリスクを心配しているのです。
すでに銀歯が入っている方でも、アレルギーの症状が出ていない方もいらっしゃるかと思います。
アレルギーの発症は急に訪れます。アレルギーはコップに溜まっていく水の話で例えられることがあります。
みんな人それぞれアレルギーに対して耐えられるキャパシティーがあり、それを上回った時にアレルギーが発症するという考え方です。
お口の中に銀歯が入っていると、歯や食べ物で擦れたりして、金属の破片が口腔粘膜(頬の内側など)から吸収されています。
粘膜は皮膚よりも物質を吸収してしまうため、皮膚に金属を接触させているよりもリスクが高いと考えられます。
その点、セラミックはアレルギーを起こすリスクがとても低いと言えます。
4.歯とよく接着する
金属との比較になりますが、金属のつめ物やかぶせ物は、歯とそんなに良くつきません。
よく、古くなった銀歯を除去する時に、ある程度削ると、はじけ飛ぶ様にボロっと取れることがあります。
もう、ほとんど歯とは接着していない証拠ですし、接着剤もそれだけ溶けて失われるということです。
その点、セラミックは歯とよく接着します。
逆にしっかり接着させないと、セラミック本来の強度や耐久性を発揮できないとも言われています。
よく接着するということは、それだけ新たなむし歯に繋がりにくいといえます。
5.硬さが似ている
セラミックの中でも、強化型ガラスセラミックと言われるものは、硬さも歯と近いです。
天然の歯も、長い年月が経ったりすればすり減ってきます。
あまり歯より硬すぎたりすると、天然の歯だけがすり減って(酸による場合もある)、つめ物が相対的に浮いてしまうことがあります。
セラミックのようになるべく歯と似ている素材を治療に用いることで、
歯と一体化してくれ、身体に優しく、新たなむし歯を作りにくいお口の中を作っていくのに強力な助けとなってくれるはずです。
これから、新たにむし歯を作りたくない方はぜひ参考にしてみてください。
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手塚 充樹
Mitsuki Tezuka
歯科医師 博士(歯学)
D.M.D. Ph.D.