どうも、歯科医師の手塚充樹です。
妊娠は口もとから!お口の中のケアはとっても大事
今回は、妊娠のためのお口の中のケアについてお話したいと思います。
妊娠準備期から、妊娠前期~後期、産後に渡るまで、お口の中をピッカピカにしておく(夫婦共々ピッカピカにすることが重要)ことで、早産や流産のリスクを下げることができます。
お口の中の細菌が多かったり、身体に対して悪さをするいわゆる悪玉菌の割合が多かったりした場合には特に注意が必要です。
なぜかというと、歯ぐきから血が出ると、血管から全身を細菌が巡り歯原性菌血症の状態になり、胎児まで到達することが明らかにされているからです。
歯原性菌血症ってなに?
菌血症とは、全身の血管内に細菌が巡ってしまうことを意味します。
もし、たくさん細菌がいる状態で歯ぐきから血が出るようなクリーニングなどをした場合
約70秒後には腕の静脈から菌が検出されてきた
ということも明らかになっています。
脅威的なスピードだと思いませんか??
歯科医師の僕ですら、まさか70秒後には腕の血管まで細菌が到達するだなんて思いませんでした。
歯ぐきの出血は、歯ぐきだけの問題だと思ってしまいがち。
実は、全身に影響を及ぼしているんですね。
細菌は胎児(お腹の中の赤ちゃん)にまで到達する?
口腔子宮感染とは?
お口の中の細菌叢において、悪玉菌(歯周病原菌など)が多くいる状態で、歯ぐきから血が出ると、全身に細菌が巡ってしまうことはお話しましたね。
その全身を巡った細菌ですが、実は母体の身体の中だけでは留まらず、胎児の方まで到達してしまうことがわかっています。
ある研究で、死産してしまった胎児を調べたところ、かなりの腐敗臭がしており、細菌検査をしたところ、口腔内にしかいないはずの細菌が大量に検出されたんだそうです。
母体の口の中から細菌が血管に入り、全身を巡って赤ちゃんを死なせてしまったわけです。
これだけ危険な菌血症ですが、
100歩譲って、頻繁に起こる菌血症によって赤ちゃんを死なせてしまうほどの重症な状態は稀だったとしましょう。
しかし、菌血症が頻繁に起こることによって、身体の中では弱い慢性炎症が起こり、血糖値のコントロールに影響を与えたり、肥満に繋がったりしてしまうことも知られています。
また、特に妊娠中期~後期にかけては、胎児がかなりの量の鉄分を母体から欲しがるなんていうことも言われていますが、実は、細菌達も活動するために鉄分を必要としています。
血液に含まれる鉄分は、細菌の大好物です。
ですので、母体は、胎児にたくさん鉄分を供給してあげなければならないのに、細菌感染が頻繁に起こっているような状況では、細菌からも鉄分を奪われてしまい、母体は鉄欠乏の状態に陥ってもおかしくありません。
また、鉄分と精神状態の安定への関連もよくわかってきており、お母さんの鉄欠乏状態が産後うつへ繋がることがあり、赤ちゃんに対して十分な愛情を注げなかったり、赤ちゃんと仲良しになれないことが多くなるという研究結果もあります。
せめて、自分が頑張って食品やサプリメントから摂取した鉄分は、
細菌じゃなくて、赤ちゃんの身体と母体の身体のために使いたいですよね。
鉄分の有効活用のためにも口腔のケア・クリーニングは大事なのです。
歯周病原菌は口から口へうつる?
冒頭で、夫婦共々お口の中をピッカピカにして妊娠に望んだ方がよいことをお伝えしました。
それは、お口の中の菌は、唾液を通じて人から人へうつるからなんです。
せっかく、女性がお口の中をピッカピカにして妊娠に望んでいても、お相手の男性のお口の中が重度の歯周病にかかっていたり、大量の古い歯石を溜め込んでいたりしたら効果も半減してしまいますよね。
ですから、夫婦一緒にお口の中をピッカピカにして、栄養と愛情をたっぷり赤ちゃんに注ぎ込める準備をしてあげることはとっても大事です。
それでは、今日はこの辺で!
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手塚 充樹
Mitsuki Tezuka
歯科医師 博士(歯学)
D.M.D. Ph.D.